ビックリマンチョコが大ヒットし続けた販売戦略とは?
ビックリマン販売戦略がなぜ参考になるか?
ビックリマンチョコが売れ続けているという。
チョコレート菓子にシールが付いた、なんともないお菓子。他にも、似たようなおまけ付きお菓子はたくさんある中で、ビックリマンチョコが売れ続けている理由に、モノを売る上でのすごいヒントが隠されているのです。
そもそも、ビックリマンチョコの売りは、チョコレートではなく、それに付いているシール。そして、ビックリマンチョコを売るために行ってきたことは、肝心なお菓子を工夫することではなく、シールをとっかえひっかえ、色々なものを出してきたことによって、売り続けてきたのです。
では、そのシールは、どのような考えに基づいて、出され、そして人々を魅了してきたのでしょうか?
ビックリマンチョコのシールの歴史
1977年 | ドッキリシール | ビックリマン登場 |
マンネリで売上下降 | ||
1985年 | 悪魔VS天使シリーズ | 大ヒット |
1992年 | 悪魔VS天使シリーズ終了 | |
女児向けの「ビックリコ」 | ヒットせず | |
1999年 | 「バグ悪魔VSギガ天使シール」 | 新世代にウケる |
2005年 | ビックリマン 20th ANNIVERSARY | |
2006年 | ビックリマン 21st ANNIVERSARY ひかり伝 | |
2006年 | ビックリマン プロ野球チョコ | |
2012年 | ビックリマン伝説 | 旧世代にのみウケる |
2013年 | 初音ミクとコラボした「ミックリマン」 | 新世代にウケる |
ももいろクローバーZとの「ももクロマン」 | あらゆる世代に波及 | |
「北斗の拳」との「北斗のマン」 | 新世代にウケる | |
「モンスターハンター」との「ビッ狩りマン」 | 新世代にウケる |
発売開始時の非常識な戦略?
当初、ビックリマンはチョコを挟んだウエハースに「ドッキリシール」というおまけのシールを同封して30円という価格で販売していました。
このシールのコンセプトは「どっきり」で、笑いを誘ったりいたずらを仕掛けたりするシールでした。
このことからも、当初の商品は、チョコレートよりもシールに重きをおいたものですね。
であれば、もっと値段を安くしてシールそのものを売ればいいのではないか?
とも考えられますが、そもそもこのビックリマンチョコを販売しているのは、ロッテという製菓会社であって、お菓子を売るのが本業。売りたいのはシールよりもお菓子なわけですね。
であれば、味を工夫して売るのが、本来のやり方なのですが、おまけにこるという、ある意味非常識な戦略です。なぜ味ではなく、おまけに凝ったのでしょうか?
ビックリマンのターゲットは、駄菓子屋に来る子どもたち。そうした子供たちは、味云々よりも、目新しさ、流行、面白さ、そんなもののほうが、プライオリティーが高いですよね。しかも、金額も高く設定できない。
そうなれば、味以外の要素で、しかも低料金で、子どもたちの関心を引く必要があったのでしょう。
そして、ビックリマンチョコは、お菓子よりもシールが欲しいという動機で子どもたちが買うようになりました。
大ヒットのきっかけとなった戦略
当初、びっくりシールは大変面白く、多くの子供達の支持を受けたのですが、次第に飽きられてしまいました。
というのも、びっくりするのははじめのうち、種がわかってしまえば次からはびっくりしなくなりますし、そうなんどもびっくりを創りだすのもできないですからね。
で大きな戦略転換をします。
ここでもまた、お菓子の味は二の次で、シールそのもののコンセプトに着目します。
- 希少なホログラムシールを入れる
- シールにストーリー性を持たせる
- コレクションさせる
この戦略が大当たりし、シリーズ開始以来、空前の大ヒットとなります。お菓子ではなくシールに着目した戦略がドハマりで、しまいにはシールだけぬきとったらお菓子を捨ててしまう子どもたちまで現れて、社会現象にもなりましたw
ここで注目したいのが、なぜシールを大量に欲しがったのかです。
これはコレクションさせようという狙いが当たったんですね。コレクションさせるために、シールを三すくみでキャラクター設定してにストーリーをもたせたことが、大きく貢献していますね。
「全10種類」なんて書いてあれば、4種類、6種類しかもっていなければ、残りもないと、気持ち悪くなるから、全10種類になるまで買おうとなりますからね。
それと、希少なホログラムシール、これは、当時では非常に珍しかったものだそうです。希少なものとなれば、手に入れようと思うのが人情。
そうした狙いがずばり的中したわけですね。
しかし、こうした仕掛けは、そもそも、商品を買ってくれる人がいるであろうという見込みがあって、初めて成り立つもの。
今まで売れていたものの、テコ入れとして、有効な手段でしょう。
売上を伸ばした戦略
この爆発的なヒットを、さらに底上げし、売上を伸ばしたのは、メディアミックス戦略だといいます。具体的には、シールのコレクションを促進させるために、シールに秘められたストーリーを、漫画雑誌「月刊コロコロコミック」での連載やTVアニメ放映で行ったことです。。
- ストーリーを知ってもらう
- 様々なメディアで展開
そして、このメディアミックス戦略が興味深いのは、肝心なお菓子の宣伝の宣伝と全く切り離されているというところです。
普通、お菓子の販売という点から考えれば、お菓子のストーリーを伝える、お菓子の販売を様々なチャンネルで展開するというのが、通常のセオリーでしょうが、ビックリマンチョコの場合、お菓子自体とまったく切り離しての広告展開をしています。
これによってどのような効果があったのでしょうか?
まず、純粋に、シールのストーリーの世界に没頭させることができます。シールの世界は、いわばファンタジーの世界。その世界に夢中にさせるために、お菓子という現実を切り離したことで、より、ストーリーを受け入れさせることに成功したのではないでしょうか。
そもそも、この戦略を仕掛けた時点で、ビックリマンチョコは売れまくっていたわけです。多くの人が手にしているビックリマンシール。そのシールのキャラクターによってストーリーが展開されているとなれば、否が応でも興味を引くことでしょう。
すでに売れているビックリマンであったからこそ、様々なメディアでのメディアミックス宣伝を用いるまでもなく、何をやってもいい反響を得ることができたに違いないのですが、それを、お菓子と全く切り離して、独立したアニメのストーリーとして展開させたことで、このメディアミックスがより効果を発揮したのです。
新規顧客開拓に失敗?
やがて爆発的なヒットも収束すると、なんとも潔く、一旦シリーズを終了させます。
それから、新規顧客を開拓するために、様々な試みが始まります。
それまでは男児をターゲットにしていたビックリマンチョコは、今度は女児をターゲットにして、それまでのビックリマンチョコとはほとんど関係なく、まったく新しいともいえるシリーズ、「ビックリコ」を打ち出したのですが、これは売上も期待するほどではなかったといいます。
この失敗は大変多くの示唆を含んでいますね。
ビックリマンは、先にも述べたように、お菓子ではなくシール目当てに購入されています。
よって、新規顧客開拓として、シールを欲しがる対象を変えることで、新規顧客の開拓を図ろうというのは、普通に考えることでしょう。
ビックリマンチョコの天使対悪魔シリーズでは、男の子をターゲットにして、ストーリーの中に引きこむことで、大変なヒットを生み出しました。
しかし、女の子をターゲットにしたビックリコでは、ヒットを生み出すまでは行きませんでした。
女の子には、シール集めはウケないのでしょうか?
そんなことはありません。今で言うならオシャレ魔女ラブ&ベリーやプリキュアやアイカツなどは、 このビックリコと同じようなコンセプトで、大ヒットし、成功をおさめています。
また、ビックリコには、ビックリマンチョコとして培った、販売の下地もあり、プロモーション環境も、申し分がなかったはずです。
ということは、ビックリコの世界観に、女児を引き込むことができなかったことが、失敗の要因であったのでしょう。
実際、カードゲームとして成功しているオシャレ魔女ラブ&ベリーやアイカツは、その設定が、しっかりしていますね。
ビックリコは、この女児販売戦略を練り直すことをセず、さっさと新たな販売戦略に乗り出しました。
失敗後に繰り出した無難な次の一手
ビックリマンチョコは、女児向けでヒットを繰り出すことができず、その続く戦略として打ち出したのは、「バグ悪魔VSギガ天使シール」という、過去のビックリマンを現代風にアレンジしたものでした。そして、お得意のメディアミックス手法で、TVアニメ「ビックリマン2000」と連動させ、再び販売を軌道に載せることに成功しました。
その後も「ビックリマン 20th ANNIVERSARY」(2005年)、「ビックリマン 21st ANNIVERSARY ひかり伝」(2006年)、「ビックリマン プロ野球チョコ」(2006年~2008年)、「ビックリマン伝説」(2012年)といった、戦略を繰り出し、無難に売上を保ったようですが、結局、これらは過去の企画の焼き直しに過ぎませんでした。
つまり、この販売形態は、シールの企画さえ間違わなければ、売れるということがわかったわけです。
全く新しい客層を獲得できた戦略
再び、ビックリマンは、新しい客層を得るための挑戦をしました。
そして今度は、全く新しい顧客の獲得に成功をします。それは一体どのような戦略をとったのかというと、それは人気ジャンルとのコラボでした。
具体的には、初音ミク、ももいろクローバーZ、北斗の拳、モンスターハンターなどです。
- 初音ミクとのコラボ > ミックリマン
- モモクロとのコラボ > モモクロマン
- モンスターハンターとのコラボ > ビッ狩りマン
- 北斗の拳とのコラボ > 北斗のマン
すでに多くのファンをもつ人気のジャンルなので、それに関連したビックリマンチョコが出れば、興味を示すのは当然のことでしょう。
天使VS悪魔シリーズでは、まったく新しいコンセプトをゼロから作り上げたので、負担も大きく、当たり外れの出るリスクもありました。しかし、この人気ジャンルとのコラボであれば、すでに人気のあるものに相乗りする形なので、外れるリスクは少ないですね。
また、これからも、人気のジャンルは次から次へと生まれてくるわけですから、次々と、新しいジャンルにあいのりしていけばいいだけですね。
今後の課題
人気のジャンルとコラボすることで、容易に売上を上げることができるとわかったビックリマンチョコ。これから次々と新しい人気のものが出てくるわけですから、新しい人気ジャンルとのコラボを続けていけば、その都度、売上も上がるでしょうし、飽きられることもないでしょう。
まさに金脈を掘り当てたかに思えるビックリマンチョコ。今後、どのような展開になるのか、大変興味深いですね。
一貫した販売戦略はびっくりさせること
ビックリマンチョコのマーケティング担当者は、ビックリマンのコンセプトを次のように説明しています。
「顧客をビックリさせたり、驚かせたりすることを常に意識している。それはこの商品が生まれたコンセプトであるし、かつての担当者も大事にしていた。その積み重ねが結果としてロングセラーにつながったのではないか。これからも『ビックリマンって面白いよね』と拡散したくなるようなマーケティングを展開していく」
今後、新しいジャンルとのコラボをしていけば、その都度、新鮮な驚きを与えることができるのであろうから、そこで、あまりビックリマンチョコがでしゃばってしまっては、コラボのバランスが崩れる恐れもある。
しかし、かといってビックリマンチョコが主張しなくなったら、そもそもビックリマンチョコである必要性もなくなってきてしまう。
その点も、担当者はよく心得ていて、このソーシャルメディア時代の中、常に人々の話題になるよう、「様々な角度から新しいネタやニュースを提供し、常に人々の意識の中にビックリマンがあるようにする」ことを心がけているという。そして、引き続き、ビックリマンチョコには、ユニークな企画や斬新なアイディアが目白押しだという。
ビックリマンチョコの役割はチャンネル
ビックリマンチョコにとって、はっきり言って、お菓子は邪魔ですよね。実際、子どもたちの中には、シールだけ抜き取って、お菓子を捨ててしまうなんて子もいます。
しかし、ビックリマンチョコは、チョコレートと一緒に販売するからこそ、お店のお菓子売り場に商品を置くことができるのです。つまり、シール単体での販売とは異なった販売チャンネルを持つことができるというメリットが有るわけです。
よって、ビックリマンチョコが他の人気ジャンルとコラボする際、ビックリマンチョコとして主張するのは良くないものの、チャンネルの役割として、様々なニュースを作り出したり、話題を提供することで、コラボしたジャンルとのウィンウィンの関係を築くことができるというわけです。
ビックリマンが今度も売れ続けるには、このチャンネルである部分にチカラを入れることが、重要なのです。